ある女性のお話
以前、ある会員さんの女性に、
こんなことを聞かれました。
「生涯にわたって、
ほかの人には心を奪われないで、
ずっと一人の人を好きでいられる人なんて、
この世にいるんですかね〜」と。
ぼくは、
「う〜ん…」
とちょっと悩んで、
「いないことはないとは思いますが、
でもそれは、
一般的に考えられているよりも、
とても難しいことのような気がします。
一人だけでできることではなく、
お互いの努力も不可欠となると思いますし」
そう答えました。
「でも、どうしてですか?」
とお聞きしますと、
彼女さんは、
こんな身の上話をされました。
彼女さんは、
大好きだった男性とめでたく結婚をされ、
新婚当初は、
こんな素敵な人と結婚できたなんて、
夢なんじゃないかとまで思ったのだそうです。
そして、
旦那さんとなったその男性は、
理想的な男性で、
お付き合いしてから10数年以上に渡って、
女性問題もなければ、
経済的な問題もなく、
仕事が終わったら、まっすぐ家に帰ってきてくれて、
休みの日も、家にいてくれるとのこと。
でも、
そんな理想的な旦那さんにも関わらず、
時間というのは残酷なもので、
次第次第に、
旦那さんへの情熱は、
冷めていってしまったとのことでした。
そして、
彼女さんは、
ほかに心惹かれる男性ができ、
その方とエイジャに遊びにくるようになったのでした。
世間一般の価値観からすれば、
彼女さんの行動は、
相当な非難を浴びてしかるべき行動に、
なるのではないかと思います。
でも、彼女さんのような行動は、
作家の遠藤周作さんによりますと、
当たり前のことということです。
遠藤周作さん曰く、
「結婚生活を含めて、どんな生活でも、
生活である限り、
うらぶれて、地味で、色彩の乏しいものです。
そんな生活に身をひたしている主婦が、
通り過ぎる疾風のような華やかなものに、
一時でも心を奪われるのは当たり前のことで、
それまで非難するのは残酷というものです」
とのこと。
これは、
30年前に書かれたものですが、
でも、
30年前とまったく変わらず、
現在でも、
そのような残酷なことは、頻繁に、
行われてしまっているように思います。
わたしは、
不倫や浮気そのものよりも、
それを非難の対象としてしまうことのほうが、
社会にとって、
大きな問題なのかもしれない、
そんなことを思うことがあります。